葬儀用のふくさを選ぶ際、色と並んで重視すべきなのが「素材感」と「模様」です。同じ紺色や紫色のふくさであっても、その素材が光り輝いているか、あるいはマットな質感であるかによって、受ける印象は劇的に変わります。弔事におけるふくさは、光を反射しない「マットな質感」が理想とされています。例えば、サテンのような光沢が強い生地は、たとえ色が黒であっても、パーティーのような華やかな印象を与えてしまうため、葬儀には不向きです。最も望ましいのは、縮緬(ちりめん)や一越(ひとこし)といった、表面に細かい凹凸のある伝統的な絹織物です。これらの素材は光を柔らかく吸収し、深い色合いをさらに上品に引き立ててくれます。また、ポリエステル素材であっても、最近は高品質な無光沢のものが多く、手入れのしやすさから人気があります。次に模様についてですが、葬儀用のふくさは基本的に「無地」が最も格が高いとされます。もし模様が入っているものを選ぶのであれば、蓮、蘭、菊、竹といった、弔事や静寂を象徴する植物の柄、あるいは伝統的な有職文様などの控えめなものに限ります。金糸や銀糸が使われているものは、たとえ地色が黒であっても慶事用ですので、絶対に避けてください。また、キャラクターものやブランドロゴが大きく目立つようなデザインも、葬儀の場では軽薄な印象を与えかねません。ふくさはあくまでも香典を引き立て、守るための脇役であることを忘れてはなりません。色、素材、模様の3つがすべて「控えめ」に統一されていることで、初めて大人の節度ある装いが完成します。よく「リバーシブルふくさ」の利便性が語られますが、葬儀で使う場合は、裏側の慶事用の色が端から見えてしまわないよう、仕立ての丁寧なものを選ぶことが大切です。特に、弔事側が紫で、慶事側が金というような組み合わせの場合、紫を表にしても金の縁取りが見えてしまうと台無しです。細部にまで気を配り、素材の質感を大切にすることは、故人への惜別の情を丁寧に包み込むことと同じ意味を持ちます。自分が手にするふくさが、静寂な式場の空気に馴染んでいるか、一度冷静に客観視してみることも、正しいマナーの実践において非常に有効なプロセスと言えるでしょう。