伝統的な葬儀が、「お通夜」と「葬儀・告別式」の二日間にわたって行われるのに対し、近年、そのお通夜を省略し、葬儀・告別式から火葬までを、すべて一日で執り行う「一日葬(いちにちそう)」という形式を選ぶ人が増えています。これは、現代社会のニーズに応える、新しい葬送の形の一つとして、急速に認知度を高めています。一日葬が選ばれる最も大きな理由として、「ご遺族、特に高齢の親族の身体的・精神的な負担の軽減」が挙げられます。二日間にわたる長時間の儀式は、高齢者にとって大きな体力的な負担となります。また、遠方に住む親族にとっては、二日間の滞在は、仕事の調整や宿泊の手配など、様々な面で負担が大きくなります。一日で全ての儀式を終えることができれば、これらの負担を大幅に軽減することが可能です。また、「費用の抑制」という現実的なメリットもあります。お通夜を行わないことで、式場の使用料が一日分で済むだけでなく、弔問客に振る舞う「通夜振る舞い」の費用も不要となります。これにより、葬儀全体の費用を、数十万円単位で抑えることができるのです。しかし、一日葬を選ぶ際には、考慮すべきデメリットも存在します。最も大きな点は、お通夜が担っていた「日中の告別式には参列できない人々が、弔問に訪れる機会」が、失われてしまうことです。仕事の都合などで、平日の日中に行われる告別式にはどうしても参加できない、という友人や知人は少なくありません。そうした人々にとって、お通夜は故人と最後のお別れをするための、唯一の機会でした。一日葬では、その機会がなくなってしまうため、後日、「お別れができなかった」という不満の声が上がったり、葬儀後に自宅への弔問客が相次いだりする可能性も考えられます。お通夜を省略するということは、こうした社会的な側面も省略することに繋がるのです。一日葬は、確かに合理的で、負担の少ない選択肢です。しかし、その決定を下す前には、故人の交友関係や、親族の意向などを十分に考慮し、後悔のないよう、慎重に話し合うことが何よりも大切です。