ご遺族が葬儀の動画撮影を決断した場合、次に考えなければならないのが、「誰が撮影するのか」という問題です。親族の一人がカメラを回す、という選択肢も考えられますが、もし、本当に質の高い記録を残し、かつ儀式を滞りなく進めたいのであれば、専門の「葬儀ビデオグラファー」や、撮影サービスを提供している葬儀社に依頼することを、強くお勧めします。プロに任せるべき理由は、大きく三つあります。第一に、「儀式への専念」です。親族が撮影を担当すると、その人は、ファインダーを覗き、アングルを考え、バッテリー残量を気にするなど、撮影という作業に意識を集中せざるを得ません。その結果、故人とのお別れに心を集中させたり、ご遺族として参列者に対応したりといった、本来果たすべき役割を、十分に全うすることができなくなってしまいます。プロに任せることで、ご遺族全員が、心置きなく、故人を偲ぶという儀式の本質に専念することができるのです。これは、何物にも代えがたい、最大のメリットと言えるでしょう。第二に、「専門的な技術と機材」です。プロのビデオグラファーは、葬儀という特殊な環境下での撮影に熟練しています。読経が響く静寂の中で、いかに目立たず、音を立てずに移動するか。厳粛な雰囲気を壊さない、適切なカメラワークとは何か。そうした、専門家ならではのノウハウを持っています。また、高感度のカメラや、集音性の高いマイクといったプロ仕様の機材を使用するため、薄暗い室内でも鮮明で、かつクリアな音声の映像を記録することができます。後で見返した時の、映像としてのクオリティが、素人の撮影とは比較になりません。第三に、「プライバシーへの配慮」です。プロは、撮影前に、ご遺族と綿密な打ち合わせを行います。棺の中の故人のお顔をアップで撮るべきか、涙を流している参列者の顔を撮っても良いか、といった、きわめてデリケートな点について、事前に撮影範囲のルールを明確にします。感情に流されることなく、第三者の客観的な視点で、節度ある撮影を行ってくれるため、プライバシー侵害のリスクを最小限に抑えることができるのです。大切な最後のお別れの記録だからこそ、その道のプロフェッショナルに託す。それは、故人への、そして参列者への、最大限の配慮と言えるでしょう。