もし、あなたが参列した葬儀の会場で、ビデオカメラを構えた人を見かけたり、受付で「本日は記録のため、写真・動画の撮影を行っております」といった案内を目にしたりした場合、どのように振る舞うべきでしょうか。無断撮影がマナー違反である一方、ご遺族の許可のもとで行われる撮影は、その葬儀の一部です。参列者として、その意図を尊重し、適切に対応することが求められます。まず、最も大切なのは、「撮影を妨害しない」ことです。カメラの前をわざと横切ったり、撮影者に対して不快な視線を送ったりするような行為は、故人を偲ぶためのご遺族の願いを妨げることになりかねません。撮影者は、ご遺族の依頼を受けて、仕事として、あるいは善意でその役割を担っています。その立場を理解し、静かに儀式に集中しましょう。次に、「自分が写り込みたくない場合の対応」です。どうしても自分の姿を映像に残されたくない、という気持ちは、尊重されるべき個人の権利です。その場合は、撮影者に直接、あるいは近くにいる葬儀社のスタッフに、「申し訳ありませんが、私は撮影を控えていただけますでしょうか」と、小声で、そして丁寧にその意思を伝えます。そうすれば、撮影者は、あなたが映らないように配慮してくれるはずです。また、焼香の列に並ぶ際などに、カメラの位置を意識し、少し角度を変えたり、下を向いたりすることで、顔がはっきりと映るのを避けることも可能です。そして、絶対に忘れてはならないのが、「SNSなどへの投稿の禁止」です。たとえ、その場で撮影が許可されていたとしても、それはあくまでご遺族のための、プライベートな記録です。その映像の一部を、自分のスマートフォンで撮影したり、後日、SNSやブログなどで、「〇〇さんの葬儀に行ってきました」といったコメントと共に公開したりすることは、重大なプライバシー侵害であり、絶対に行ってはなりません。ご遺族の許可のもとに行われる撮影は、その目的と、公開範囲が厳密に限定された、きわめて閉鎖的なものである、ということを、深く心に刻んでおく必要があります。ご遺族の想いを尊重し、節度ある振る舞いを心がけること。それが、撮影が行われる葬儀に参列する際の、私たち一人ひとりに求められるマナーです。